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障害者支援をはじめ
福祉業界の 人手不足は
深刻の度を 増しています。
一部の 人気のある法人は
多くの学生が 新規採用の募集に
殺到していますが、
どれだけ募集をかけても
学生がやってこないと
悲鳴を上げる法人は 多くあります。
一方、企業では 中高年社員に
希望退職・早期退職を 求める動きが
止みません。
女性用下着メーカーの
ワコールホールディングス(京都市)は
2024年2月、
150人程度の希望退職者を
募集したところ、
大きく上回る215人の応募者があったと
発表しました。
同社は 不採算店の撤退を 進め、
経営の立て直しを 図る方針を
打ち出していますが、
業績不振の会社だけでなく、
業績が 好調の会社も
人員整理に 走っているのが
現在の特徴です。
AI(人工知能)の進化と 普及によって
ホワイトカラーの仕事が 省力化され、
国際競争に生き残るため
コスト減を しようというのです。
以前から、障害者支援の事業所では
企業から転職してきた人が
時々 見られます。
転職者にとっては
まったく異なる業界になりますが、
企業での経験を 障害者支援に生かし、
やりがいを 感じている人も
少なくありません。
情報や体験の機会が ないために
躊躇しているものの、
潜在的な 福祉への転職希望者は
多いと思います。
福祉の仕事は きつい割に 給与は少ない、
資格がないと 働けないのではないか、
という先入観を 持っている人も
多いでしょう。
しかし、スローコミュニケーションが
2020年度に
厚生労働省の 推進事業として
企業から福祉への 転職者に
アンケート調査を したところ、
給与面も 人間関係・メンタルヘルス面も
「まあまあ満足」が
最も多い回答でした。
ビジネスでは得られない 感動や癒しを
福祉の仕事から 得ている人も
たくさんいます。
むしろ、企業からの転職に
ブレーキを かけているのは
福祉側だったりします。
昨年、大手商社から
東京都内の 障害者支援施設の
施設長に転職した 男性は、
福祉へ転職するために
社会福祉士の資格を 取り、
介護施設のスタッフ募集に
応募したところ、
どこに行っても
門前払いをされたそうです。
「立派な経歴ですね。
でも、経験がない方は お断りしています」
大企業で 長年勤めてきた人が
福祉現場で働くなんて 無理、
低い給料だと 文句を言われたら
どうしよう、
大企業の 管理職だった人を
指導できるわけがない……。
社会福祉法人の 経営者の戸惑いが
伝わってくるようです。
また、企業の管理職=事務や管理の仕事と
決めつけて、
断っているケースも 多いと思われます。
しかし、ある社会福祉法人では
長年企業で 働いてきた人を
積極的に採用し、
行動障害のある障害者の
直接支援の現場で
働いてもらっています。
たたかれたり、髪をつかまれたり、
つねられたりすることも ありますが、
彼らは 平気な顔をしています。
「そういう『悪意のない暴力』(行動障害)は
どうってことは ありません」
元企業の 管理職の男性は 言いました。
顧客からの クレーム、
取引先との 駆け引き、
同僚同士の 足の引っ張り合い。
熾烈な ビジネスの現場で
神経を すり減らしてきた人にとっては、
生きにくさゆえに
行動障害を 起こしては 誤解される
障害者を 支援していると
「癒し」すら 感じられるというのです。
都内の障害者施設の
施設長へ 転身した男性は、
大手商社に 勤めていたころ
エジプトに 計10年 駐在したそうです。
「異文化体験は 慣れています。
商社マンは 障害者支援の仕事に
向いていると思う」と言います。
企業で働いている人が
すべて向いているとは 思いませんが、
調整力や 交渉力、
不測の事態へ 対応する能力、
顧客のニーズを つかんだり
多様性を 受け入れたりする センスなど、
企業での経験で
身に付けている人はいます。
そういう人材を
障害者支援の現場で 生かすことを
もっと 考えるべきではないでしょうか。
スローコミュニケーションの調査を
まとめた本は、
以下から 読むことができます。
◆障害者福祉業界への転職BOOK
「福祉ではたらく」(2021年3月)
https://slow-communication.jp/info/2609/
(文:代表・野澤 和弘)
☆第2回からは
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