
(音声:天馬 トモエさん)
「障害の社会モデル」という
考えかたが あります。
障害のある人の困りごとは、
社会のほうに障害(バリア)があるから起こる
という考えかたです。
たとえば、
車いすに乗っていると
段差や階段などで 上にあがれないことがあります。
それは 車いすに乗っている人に
障害があるからというよりは、
段差や階段が 障害になっている
ということです。
何が障害になるかは、
人によって 変わる場合が あります。
最近 レストランや ファストフードの店に
よくある タッチパネル式の メニューは、
操作が苦手な人・できない人にとって
障害になります。
一方で、
店員さんに呼びかけたり、直接 注文を伝えることが
難しい人にとっては、
タッチパネル式のほうが 便利な場合も あります。
この考えかたは、
言葉が「わからないこと」にも
当てはまるのではと思います。
言葉を理解する能力に 障害があるから
わからない というよりは、
言葉そのものが むずかしい。
または、その言葉づかいが
その人に合っていないということも あります。
これは 誰にでも あることだと思います。
身近な例では、方言が そうです。
たとえば、
青森の方言は(といっても いくつか ありますが)、
ほかの地域の人が聞いたら
あまり わからないでしょう。
それは、ほかの地域の人に
能力がないからというよりは、
ふだんの言葉づかいと違うからですよね。
専門的な言葉づかいや、
ある分野での 独特な言葉づかいも そうです。
『オタク用語辞典 大限界』(三省堂、2023年)という本には、
次のような例文が のっています。
「セブチの眠らせる気ゼロのヌッパン」
「イーユイの火力高杉乙」
これらは、アイドルやゲームなど
共通の趣味をもっている仲間同士で
コミュニケーションするための 言葉づかいです。
むしろ 言葉の「バリア」を つくることで、
仲間同士の きずなを深めているとも いえます。
何が わかりやすいか、何が わかりにくいかは、
人によって 違うんですね。
「知的障害のある人向けの文章」
「外国の人向けの文章」
といったことは、
あくまで 目安です。
「このくらいの知的障害があって、
このような暮らしをしている人」
というのを 想像して書いたり、
「知的障害のある人の多くにとって、
これが わかりにくい」
といった情報をもとに 書いているわけです。
実際には、
それぞれの人が どこで 何をしているか、
何に 関心があるのかなどによって
わかりやすいかどうかは 変わることが あります。
今年度のコラムでは、
このような「言葉づかいの違い」について
詳しく お話ししていこうと思います。
具体的には、次のような内容を 考えています。
(内容は 変わる場合も あります。)
◯世代での違い:いつの時代も言われる「最近の若者は…」
◯地域での違い:「ときんときん」としか 言いようが にゃあわ
◯母語での違い:かたい言葉が わかりやすい?
◯職業での違い:職場の中の人に伝えるか、外の人に伝えるか
◯方法での違い:何に書くか、どこで話すか
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(文:副理事長・羽山慎亮)